令和4年5月21日(土)<これからの網膜診療を考える>を開催いたしました(印象記)

 令和4年5月21日土曜日秋田拠点センターアルヴェ多目的ホールにて、<これからの網膜診療を考える>をテーマに、網膜分野でご高名な3人の先生方に講演していただきました。

 特別講演1は、「知って得する網膜診療のイメージング」について藤田医科大学眼科学教室教授 伊藤逸毅先生にご講演いただきました。伊藤先生は1991年から始まった光干渉断層系(OCT)の変遷を交えながら、現在のOCTでどのような所見がとらえるようになったかを教えてくださいました。OCTにおけるソフトウエアの進歩はSegmentationの進歩であり、この進歩により網膜厚の定量解析がより詳細にできるようになりました。平均加算の進歩によってノイズを低減させることができ、トラッキング機能は眼底のモニタリングのできるSLOに寄与するところが大きいそうです。また広画角によってより広範囲の網膜を、Swept sourceにより硝子体面や脈絡膜まで評価できるようになりました。さらにEn face画像も加わり、網膜疾患をより一層詳細に観察することができます。講演を通し、私たちの網膜診療に欠かせないOCT検査は、私たちに網膜疾患への理解を一層深めさせてくれるだろうと感じました。
 特別講演2は、「実臨床から読み解く糖尿病黄斑浮腫診療のポイント」について久留米大学眼科学教室教授 吉田茂生先生にご講演いただきました。抗VEGF療法は糖尿病黄斑浮腫への治療のゴールデンスタンダードではありますが、その他の治療方法としてステロイドのテノン下注射、毛細血管瘤に対するレーザー治療、そして硝子体手術が挙げられます。網膜深層における網膜毛細血管瘤(MA)が黄斑浮腫に相関するが、抗VEGF投与によってこの血管瘤が消退するものとしないものがあるようです。MAのサイズが比較的大きいものが残余しやすく、そしてその残余下MAに対して低侵襲網膜光凝固をIAガイドで行うことがすすめられるとのことです。また糖尿病網膜症は炎症が生じており、VEGF、MCP-1、IL-6そしてIL-8などのの炎症サイトカインが硝子体内で高値であることがわかっています。VEGFだけでなく、MCP-1、IL-6そしてIL-8のサイトカインを低減させることも重要であり、ステロイド治療はIL-6とIL-8低下させる可能性があるそうです。
 特別講演3は、「BRVOで平均0.8を達成したルセンティスーZIPANG study-」について信州大学眼科学教室教授 村田敏規先生にご講演いただきました。BRVOは抗VEGF療法により視力予後の良い疾患と考えられるようになりました。今までのStudyでは発症3か月で中心窩の毛細血管瘤が増加して難治性になることが知られており、発症2か月以内にルセンティスよる治療を開始すると視力予後がよいということでした。またルセンティスの投与本数が少なくて治療可能だった症例の特徴は、視神経・中心窩を結ぶ静脈が閉塞領域に含まれず、中心窩の浮腫液を排水できる点、中心窩に漏出点(毛細血管瘤)が形成されていない点の2点だそうです。併せて無血管領域におけるレーザー治療に対しては、無血管領域があるとVEGFを放出する足場となっているのでその産生を抑えるためにレーザー治療は必要であり、ルセンティスを投与して網膜浮腫を軽減させた時期にレーザーをすればより低侵襲でレーザー治療が可能であるとことでした。
 

 どの講演も普段何気なく診断や治療をしている網膜疾患に対して、あらためて考えさせられる貴重なものでした。今回はハイブリット形式で行われ、多くの先生方に視聴していただいた講演会となりました。

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