令和4年3月19日土曜日 第26回秋田県眼科学術講演会が現地およびMicrosoft TeamsによるWebでのハイブリッド形式で開催されました。
講演1は、東邦大学医療センター大森病院眼科教授 堀 裕一先生による「ドライアイ診療アップデート 2022年版」でした。堀先生はドライアイのガイドラインをもとに、TFOD(涙液の層別診断)とTFOT(涙液の層別治療)について詳しく教えてくださいました。Break up patternを6つのカテゴリーにわけてどのタイプに相当するかを診断して治療することが重要だそうです。このカテゴリーはLine, Area, Spot, Dimple, Rapid expansion, Randomにわけられること、AreaやLineタイプであれば涙液減少タイプであるがLineタイプであれば点眼加療、Areaタイプはさらに重症であるため涙点プラグの適応であること、SpotやDimple, Rapidタイプであれば水濡れ低下型であるためジクアホソルやレバミピド点眼がよいこと、Randomは蒸発亢進型で軽症であるため人工涙液などでも対応できるなどの処方のコツなどを説明されました。またマイボーム腺炎のための角膜炎についても症例提示しながら、処方としてマクロライド系の内服やアジスロマイシン点眼などの有効性もその作用機序とともに教えてくださいました。日常診療に直結する有意義な講演で明日からの診療にすぐ役立つ内容でした。
講演2は、北海道大学大学院医学研究院眼科学教室教授 石田 晋先生による「糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF療法」でした。石田先生はPIGFとガレクチン1などのVEGF+α阻害はおもに早期のDME病態抑制に寄与すること、長期にわたるVEGF阻害はDMEのみならず、糖尿病網膜症の疾患活動性を鎮静化させること、毛細血管が脱落した虚血網膜の内層神経細胞はゆっくりと減少するがVEGFが遮断されるとさらに神経細胞の減少はさらに加速すること、VEDF阻害による網膜症そのものの改善は神経ー血管ユニットの消失によりもたらせること、VEGF阻害は網膜にbiochemical burnをもたらすことを講演してくださいました。日頃より抗VEGF抗体による硝子体注射を行っていますが、実際には抗VEGF抗体は網膜にさまざまな機序で作用しつつ、それらの機序は複雑に絡み合っていることなどなどを知ることができました。学術講演にふさわしい内容で非常に興味深く、大変感銘を受けました。いつまで硝子体注射を投与すべきか、なぜ黄斑浮腫が改善しない例があるのかなどの質疑応答もあり、日頃の診療を考えさせられる貴重な講演となりました。